Owners【2025年11月号】／18，19ページ

都心よりも家賃を上げにくい郊外物件の値上げ実現策とは？

 

円安などの影響もあり、物価高は今も続いています（原稿執筆時点）

大家さんとしても「家賃を上げたい」と考えている人が多いのではないでしょうか。しかし、都心の物件と比べて「郊外に行くほど家賃の値上げがしにくくなる」という実態もあります。

そこで今回は、どうすれば郊外にある物件でも「高稼働を維持しながら家賃を上げられるか」について考察したいと思います。

 

 

まず不動産市況を鑑みると、現在は新築・中古ともに不動産の価格が上昇しています。その流れの中で賃貸物件の家賃もじわじわと上昇してきているのです。とはいえ、全国的に同じように家賃が上がっているわけではありません。

 

単純に「不動産価格の上昇＝家賃の上昇」とならないケースもあります。

それが郊外にある賃貸物件です。理由は、都心よりも郊外の方が賃貸需要が弱いからです。利便性が高い都心は、多少家賃が上がっても借り手が見つかりやすいと思います。しかし、郊外の物件はエリアにもよりますが、空室が多い傾向が強く「少しでも家賃を上げると入居が決まらなくなる」という現象が起きやすいのです。

 

つまり、インフレにより仕入れた価格（土地の価格や建築費）が上がった分を家賃に転嫁できるのは、賃貸需要の強い都心エリアが中心になるわけです。では、郊外立地の賃貸物件で家賃を上げるにはどうしたらいいのでしょうか。答えはシンプルで「付加価値を与え続けること」が重要です。

実際に、私も郊外立地の物件で家賃を上げるために次のような工夫を行っています。

 

 

例えば「敷金・礼金をゼロ」「フリーレントをつける」「更新時の更新料を無しにする」「再契約時の再契約料を無しにする」などです。

 

 

これは物件を「家具・家電付き」にしたり、インターネットを「無料で利用できるようにする」などの工夫です。

 

 

高齢者や外国人などを受け入れていくことです。特に今は、東南アジア系の外国人の方が日本に数多く来ているので、外国人をターゲットにした戦略を取るのも一案だと思います。理由は、円安が進むほど外国人にとって日本がコスパのいい国になるからです。

 

現在の日本円は東南アジアの通貨と比べても、とても弱くなっています。私は今マレーシアに住んでいますが、移住した頃は日本円とマレーシアの通貨（リンギット）の為替レートは「1リンギット＝約24円」でした。それが今や「1リンギット＝約35円」（原稿執筆時）なので、当時と比べ約3割も上がっています。そのため、最近はマレーシアに住んでいても物価が安いとは感じません。同じような食材を買おうとすると、日本よりも高くなっていることもあります。逆にマレーシア人から見れば「今の日本は以前よりも安くなっている」わけです。

 

そういう意味では、同じ家賃を上げるにしても、日本人からすれば「高くなった！」と感じますが、外国人から見れば「以前と比べれば、まだ安いのでは」という印象になる場合も出てくるわけです。

 

 

実際に、私が所有している郊外の家具・家電付きアパートも外国人の入居者様が多いです。この物件では、冷蔵庫、電子レンジ、寝具、テーブル、椅子など生活に必要なものを備え付け、スーツケース1つで入居できる環境を整えてあります。このような工夫をすることで、多少家賃を上げても納得して借りてもらいやすくなります。

 

 

都心では、需給バランスの強さから不動産価格の上昇に引っ張られ家賃も上げやすい傾向となっています。その一方で、郊外にある物件は「同じ理論は通用しない」という点を肝に銘じておく必要があります。「みんなが家賃を上げているから自分も値上げをしよう」といった単純な理論は成り立たないのが現実です。

 

 

郊外で家賃を上げたいのであれば「初期費用の軽減」や「生活利便性の向上」さらに「入居ターゲットの拡大」などの付加価値アップの戦略が不可欠だと思います。

 

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